私は、この疾患に関わる人には傾聴とコーチングの「自分で考えて、決めて、実行する」サポートがとても有効であり、必要だと考えています。それには三つの理由があります。
1.オリジナルの生き方を見つけ出します
ひとつ目は、傾聴やコーチングの対話を通して、その人のオリジナルの生き方を見つけ出すことができるからです。化学物質過敏症になると様々な場面で「自分の身は自分で守るために、自己主張をしたり、とっさの判断をする」必要があります。そのためには自分の経験した「ダメだったこと・大丈夫だったこと」を振り返って整理してみることで対策やとるべき行動のアイディアが見えてきます。
化学物質過敏症の症状の程度はその時々で異なり本人にしかわからない為、危険を察したら自分の身は自分で守り、治るための行動を自分で行わなければなりません。
基本的には発作が出たら速やかにその場から離れたり、換気を要求したり、原因物質を除去する依頼をすることになります(臭いを運んできた人に部屋から出てもらう場合もあります)。
こうした行動は、それまでにその人なりに社会常識として身に着けてきた「一般的な行動規範、マナー、協調性」から大きく外れる選択や、誰かに失礼と思われるかもしれない行動をすることも必要になり、身体も心も苦しい思いをします。大変複雑な思いを抱えながら生きているため、辛い思いをため込みがちです。複雑な思いを傾聴し、その上で具体的な工夫を重ねることで、「生きやすさ、暮らしやすさ」を少しずつ向上させていく準備と行動計画をコーチングで推進します。
2.見守られていることで続けやすくなります
二つ目は、闘病・回復のための努力を見守るコーチという話相手がいることで日々の努力を継続する意思を保ちやすくなることです。
化学物質過敏症は現在の医療が対応できておらず、医師の処方も漢方薬・サプリメント・解毒剤など、身体のベースとなる回復力を助けるものです。実際に回復のために大切となることは、原因物質を避けることと体質改善や運動などによって体の自然治癒力・回復力を上げることなどの自分で行う生活改善の努力です。多くの場合、長年の習慣とは違った新しい暮らし方を実践する必要があります。身体が辛い状態に耐えながら、どれほどの期間で治るのかわからない状態で、すべきこと・避けるべきことを学び、模索し、葛藤し、継続していくことになります。症状は一進一退することが多く、時に心がくじけ、途方に暮れることもあります。その過程を共に見つめる存在がいることで、継続する意思を取り戻す支えとなりえます。
コーチは医師とは違う立ち位置でその過程を「聴き・言葉を引き出す」ことで経験そのものを見守り、経験からの学びやこれからの可能性を共に見出していきます。
3.期間を区切って「する・しない」を計画します
三つ目は、コーチとの対話をすることで、ご本人のその時期に大切としたい価値観が明確になっていき、その価値観を軸にした「期間を区切った集中と放置」を取捨選択しやすくなるためです。
患者であるご本人は体調が悪いために活動的な時間が減ります。それに加えて、発作のために参加できない場やできないことが増えます。つまり、病気になる以前に比べて、短時間に限られた方法で生活をしなくてはなりません。それまでやっていたことを全てこなすことは難しいため、「できるだけのことをなるべくやる」ということになります。その際に、「ムリなくできることのみをして、休息を大切にし、できない分のことはクヨクヨ考えない」と自分の現状を認めて割り切ることができるとよいのですが、なかなか難しいものです。実際は、多くの人は、「どうにか頑張ってこれ以上はできないという限界近くまでやっているから許して欲しい。できないでいることについて気に病んでいる」という日々を送っているのではないでしょうか。しかし、日々、精一杯がんばりつつ、できないことに悶々としていると疲労もストレスも溜まります。そして治癒力を高めるための心身の休息がおろそかになりがちです。
そこで、コーチとの話しをしていく中で「すること・しないこと」を自分で期間を区切って明確に設定することで、できないことを追い求める気持ちに精神的エネルギーを消耗することを減らして心の余裕を作り出すきっかけにすることができます。
あなたの思考を磨き、可能性を引き出す対話です
以上の「オリジナルな生き方、努力の継続、自分軸の取捨選択」の三つの鍵はあなたの中にあります。それら三つの鍵を引き出して磨き、可能性を引き出す思考の時間としてコーチとの対話セッションをご利用ください。そして、生活がしやすくなるよう、一緒に試行錯誤の道を進みましょう。場当たり的に対応していると抜け出しにくいことでも、落ち着いて考える時間を持つことで、よい工夫と習慣を見つけ出せると信じてあなたがご自分を表現して考えるためのサポートを致します。